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「弱いつながり」をもつ共同体。宮崎県に移住者・起業家が増え続ける理由

「弱いつながり」をもつ共同体。宮崎県に移住者・起業家が増え続ける理由

    CATEGORY: AREA:宮崎県

こんにちは。ライターのオカダです。突然ですが、2017年に最も注目を集めた地域はどこでしょうか。

個人的に正解だと力強く言いたいのは、宮崎県児湯(こゆ)郡新富町です。

宮崎県のほぼ中央に位置する町で、人口は約17,000人ほど。このうちの1人は、私です。2017年5月に移住し、新富町ライフを満喫しています。

新富町は、温泉があったり国内でも有数の長い浜を有する海があったり、年間を通じて様々なフルーツがとれたり・・・と魅力を上げればきりがありません。

そんな魅力がたくさんある新富町で、今日注目するのは「こゆ財団」と、そこから生まれている地域を変える場についてです。

「強い地域経済をつくる」こゆ財団


▲新富町のPR動画。こゆ財団が製作した。

こゆ財団は、「強い地域経済をつくる」を掲げ、2017年に誕生した地域商社です。正式名称を一般財団法人こゆ地域づくり推進機構といいます。

長くてかたいため、「こゆ財団」の名で親しまれています。

地域(リ)ブランディングを行い、特産品の開発や販売を通じて売上をあげ、そこで稼いだお金を、町の将来を担う起業家育成に投資し、地域経済の循環と、持続可能な地域づくりを目指しています。

こゆ財団がやっているのは、「まちの再編集」。今まで埋もれていたり、忘れられていた地域資源を発見し、再び光を当て、価値あるものを生み出しています。

シャッター商店街に新規店舗がオープンしたり、新しい町の特産品が生まれたり、人材育成講座から起業家が生まれるなど、数多くの成果を上げています。

こゆソーシャルドリンクスに参加

こゆ財団が実施しているイベントのひとつに、「こゆソーシャルドリンクス」があります。

おいしい食事とお酒を囲みながら、こゆの未来についてワイワイトークするイベントです。少人数で、食事とお酒を楽しみながらのゆるい雰囲気。「仲間を探したい」「やりたいことがあるけれど、どうはじめていいかわからない」という人にピッタリの寄り場

とされており、ひとことで言えば「ゆるい飲み会」です。

地元の酒屋さんが、特別なお酒を選び振る舞います

1年を振り返るスペシャルな宴になるということで、お誘いいただき参加してきました!

会場には、様々な料理。そして30人の方々が集まっています。つい数ヶ月前までシャッターがおりていた商店街の一画に、夜の19時から人が続々と集まりだし、笑顔になっている。

これだけでも、町の風景が変わってきたことが伝わるのではないでしょうか。

多様性の宝庫。新しい何かが生まれる土壌と「弱いつながり」がある

振り返りのプレゼンテーションを行うライチ農家の森さん(手前)

集ったのは、こゆ財団とともに、様々な取り組みをおこなう方々です。

新富町の新しい特産品として2017年に大ブレイクした「国産ライチ」を生産する農家さん。アグリテックを農業に持ち込み、希少品種のきゅうりを育てる農家さん、地元の酒店の店主、役場の職員、近所の方など、その顔ぶれは様々。

別の地域から視察に訪れていた方々や、東京からの移住希望者(翌日に物件探しを控える)や、仕事で秋田から訪れていた方もいらっしゃいます。

イベント中には、コミュニティデザインについてのトークセッションも行われました

こんなにも多様性に富んだ飲み会は、同日開催されているであろう全国の忘年会の中でも抜きん出るのではないでしょうか。

なぜこんなにも多様な方々が集まっているのか。それは、こゆ財団の活動があるからこそでしょう。

町の中で行動を起こしている農家さんと協力したり、町の外での情報発信をおこなったり、ここに集った人々は、こゆ財団がつないでいったキラリと光る点のひとつひとつを成す方々なのです。

地域でイノベーションを起こすには?

噂を聞きつけて鹿児島からのゲストも飛び入り参加。

どのような人たちとつながり、どのような人たちと共に行動を起こすかが、そこから生まれるインパクトの大きさを決めると考えたときに、思い出したいアイデアがあります。

スタンフォード大学の教授であるマーク・グラノヴェッター氏が、1973年に提唱した「ウィークタイズ理論」=弱いつながり理論です。

家族・親友・同僚などの社会的につながりが強い人々よりも、社会的つながりが弱い人々から、新規性の高い価値ある情報がもたらされる可能性が高いという説で、現在のコミュニティづくりで注目されている考え方です。

こゆソーシャルドリンクスの多様性と、飲みながら語るという「ゆるさ」は、まさに弱いつながりを生むにはうってつけです。

この場での出会いが新しい出会いを連鎖させ、化学反応を起こしそうな予感がビンビンします。

これは実は、地域の課題解決にもつながっています。

多くの地域で、何かやり始めた人は、仲間を見つけることに非常に苦労しているといいます。ひとりだけ頑張って、地域から浮いてしまったり、孤独感に苛まれるという声を聞きます。

こゆソーシャルドリンクスに集うのは、やっていることはバラバラでも、こゆ財団という媒介者がいることで、思いの根っこはつながることができる。

そんな人たちのコミュニティが少しずつ形作られています。

挑戦者の「居場所」をつくるこゆ財団

来年への豊富を語る、こゆ財団事務局長の高橋さん

2017年をものすごいスピードで駆け抜けてきたこゆ財団。2018年は、「チャレンジできるフィールドづくり」をおこなっていくといいます。

「チャレンジしよう」「やってみよう」と声高に言うのは、ある意味、簡単ではないでしょうか。場合によっては、お金で後押しする取り組みを数多く見かけます。もちろん、はじめての一歩を応援したり、支援したりすることは重要です。

しかし実は、本当に「チャレンジできる環境をつくる」ことを目指すのならば大事なのは、「またチャレンジできる環境をつくこと」ではないでしょうか。

誰もが1度の挑戦で良い結果が出せるとは限りません。

むしろ可能性は低いかもしれない。しかしだからこそ、失敗しても再挑戦する。再挑戦し続けることで、良い結果をもたらす可能性が開けるのではないかと思うのです。

こゆ財団がつくろうとしているのは、そんな挑戦者たちが集い、ときには語り合い、ときには休み、そしてまた歩きだしていくような、ホームのような居場所ではないかと感じます。

ここにくれば頑張っている人たちがいる。失敗してもそれを笑うのではなくて、次へのチャレンジの後押しをしてくれる。自分が元気なときは、誰かの背中を支えることができる。それらを包み込む、ゆるくて暖かい空間がある。

いま、新富町でつくられつつあるのは、そんな場なのだと思います。

2018年は、どんな人たちが集い、どんな挑戦が生まれるのでしょうか。

MACHI LOGでも、その姿をおいかけていきたいと思っています。