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PR不足は言い訳にしか過ぎない。農業にもブランディングが大切に

PR不足は言い訳にしか過ぎない。農業にもブランディングが大切に

    CATEGORY:観光 AREA:東京都


今回の対談の相手は、食の専門家、TVや講演でも大活躍する農民連食品分析センターの八田純人先生です。農業の現状とどうすれば地域活性化につながるのか?そのポイントは何か?についてインタビューしました。

その地域でしか作れないものを考える

-八田さんの専門という農や食というところから考えると、まちづくり、あるもの探し、として何ができると思いますか?

八田:私の田舎には「古い品種」というのがあります。例えば、茶豆というと今では黒崎茶豆とか庄内のだだ茶豆などは有名ですが、実はそれぞれの地域にも同じような豆がたくさんあるんですよ。

それらは有名な産地の茶豆に負けないくらい美味しいのだけれども、生産効率が悪いので、市場経済には乗らないのです。だから、どんどん作る人がなくなっている、という悪循環が生まれています。でも物としてはすごくいいんですよ。
大根一つとっても地域に向いている大根とかあるのですが、そうしたものを拾い上げていけば地域の特色として昔の人が大切にしていた財産として生かせることができると思います。地域に眠っている農産物とか、そこの地域でしか作れないタイプのものとかまだまだあると思います。そういうのを掘り出していくと、良いと思います。

今でも地域毎でいろいろものを作って出荷はしていますけれど、別の産地よりも早い時期に出すから商売になるとか、他の産地より安いから商売になるとか、そういうことで地域農業ってできているところがかなり大きいと感じています。

地域の特色をもっと生かしたものが、地域の人に売り買いされて食べてもらえるというのが進めばもっといろいろできるはずなんですよね。ただ、どこの地域でもそういう財産が眠っているわけではないので、やれるところやれないところがでてくるわけですが。

農家自身がもっと経営のことを勉強しなければならない

-財産の無い地域は一体と何をすればいいのですか?

八田:私は、農家自身がもっと経営のことを勉強しなければならないと思います。農家はずっと自分で野菜の値段を決めることができない時間が長かった。値段を決められるようになることで、自分の作っている野菜に対して正面向かうことができると思います。値段を決めるために、相手よりこの品種を作ったほうがもっと高く売れるかもしれない、とか、こういう秘密の作り方をすればもっと美味しいかもしれない、とか、そういう感覚をもつべきだと感じています。

「地域の人の胃袋を満たすタイプの直売所」を作ろう!

-「食」という観点からはどのようにまちづくりをしていけばよいのでしょうか。「農業」と「食品」が発達することは、まちづくりの要素の一つとなりそうだと思うのですが。

八田:地域経済が成立しているということが大前提になると思います。今の農家が直面している問題は、野菜の値段が安い、ということです。作っても、安いし、売れないし、収入が増えない、という流れができてしまっているのです。

-「道の駅」等は売上を伸ばしていますよね。

八田:直売所というのはすごいウェイトが大きくなってきていて、直売所というのが今日本のグラついた農業をかなり支えている部分が確かにありますね。ただ直売所だけが全てを解決できるわけではないです。
直売所は本来でいけば「地域の」直売所なんですよ。例えば埼玉、千葉、神奈川のような直売所であれば、首都圏の人間が観光に行った帰りに寄るような形態は「地域の直売所」とはまた違います。
地域経済が成立するためには、地域の人が利用できる形態の直売所でなければなりません。直売所は直売所でも「地域の人の胃袋を満たすタイプの直売所」が必要だと思います。

-そういう展開をしようとしても、例えば近くに大型ショッピングモールができたらどうしましょう。

八田:私の母親の買い物の仕方は面白いですよ。大型ショッピングモールも利用しますが、野菜を買うとき、「この野菜だけは」といって直売所で買うんですよ。だけどそれ以外のよくわからない分類のものはショッピングモールで買ったりするんです。その購買行動がどこで区別しているのか、というところまではまだよくわからないのですが。

-例えば「地元の農家は自由で駅前で野菜を売っていいよ」、というルールにしたら面白いのではないでしょうか。そうすればみんな帰りに買って帰ると思いますよ。

八田:それは面白い案ですね。そういう風にどこでも店を出して売ってもいいとすることで、直売所やマルシェ(市)はかなりブームになります。特にそこに若い人が積極的に入ることは、その地域全体が変わっていくきっかけになると思います。

「物に対して妥協しない」「ブランド化」が成功のルール

-農業・食からみて地域活性の「成功ルール」みたいなものがありますか?

八田:「物に対して妥協しない」、というところでしょうね。

-確かに、いいものを作ればそこに人は集まりますね。

八田:買った人がいかに満足できるか、売っている人間がいかに満足できるかの最大公約数で経済は成り立ちます。その最大公約数がどんどんどんどん大きくなって行けば、地域は活性化していきます。売ってる人間だけがもうかって、というのでは成り立ちません。

-うまくいっているところはその辺りの努力をしていますよね。美味しいお米を作っているところは年間でずっと予約が入っているなどありますし。他にそのような例ありますか?
八田:うまくブランド化ができている人たちですね。これには二種類あります。いわゆる今の消費動向をちゃんと押さえてブランド化している人、もうひとつは自分たちのもっているもの(あるもの探し)で、あるものをブランド化している人、です。