富士山のグラス?世界に勝負するこだわりの工房

国内では月間5000個の売り上げ


すっぽり手に収まるちょうど良い大きさのグラス、薄すぎず、厚すぎず、暖かみのある厚さのグラスには秘密が隠されている。 その秘密はビールを注ぐと明らかになる。


グラスの中に富士山が誕生するのだ。 ビールの泡が山頂に積もる雪に見え、日本一の山を手中に持つような感覚を味わえる贅沢なグラスは桐の箱に収められている。是非ビールを飲むたびに桐箱からビールグラスを取り出してほしい。それはきっとビールをおいしく味わうための儀式となるだろう。

日本国内では高級感のある桐箱入りの包装や、そのユニークな形状とコンセプトが好評を呼び、売り出しはじめてから1年弱で月間5000個を売り上げるヒット商品となった。

グラスは菅原工芸グラスの直営店で売られている他、上質なライフスタイルを提案するインテリア用品のセレクトショップなどで販売されている。
海外向けにはヨーロッパ、また中国の一部で贈り物用として、また飲食店の利用目的で一部売られている他、まだまだ知られていない日本の隠れた「新しいおみやげ」である。

日本に関心がある人なら一度は訪れてみたい富士山、日本人の中でも誇りにおもわない人は居ない山、富士山。 あなたも聖なる山、富士山のオーナーの気分を味わってみてはいかがだろうか。

富士山グラスが生まれたきっかけ

富士山グラスは2008年にTokyo Midtown Awardの水野学賞に選ばれたデザイナー鈴木啓太氏の作品だ。

「日本のおみやげ」をテーマにした作品で商品化が検討されたところ、菅原工芸硝子に製造の打診が入った。

菅原工芸硝子は「自社の職人が全てデザインする」ことをポリシーにしており、外部デザイナーがデザインしたものは基本的に扱わないが、デザイナーの鈴木氏が学生時代からの付き合いがあることもあり、引き受けることにしたのだ。

桐箱に焼印が入る高級感あふれるパッケージは審査員だった水野学氏率いるGood Design Companyが担当し、製造されることが決まった。

富士山グラスの形は熟練された職人しか産み出せない

富士山グラスのシンプルなフォルムを考えると「はじめはさほど製造に手間がかからない商品になるだろうと甘く考えていました」と菅原専務は言う。

実際に作ってみると、とてもシンプルに見えるフォルムを製作するのは容易ではない。 1200度の熱で溶かされた硝子は吹き竿に巻き取られ、職人が息を吹き込む。

富士山グラス用に作られた金型の中で硝子に息を吹き込むが、グラスの「富士山の裾野部分」の角を作りだすのに苦労を重ねた。一定の厚さと富士山の型を産み出す職人の「息によって産み出される技」によって富士山グラスは作り出されているのだ。

この富士山グラスを作り出せる難易度の高い技術を持つ職人はまだわずか3人しかいない。

日本国内ではこのコンセプトの面白さが話題を呼び、贈り物として、そして日本からのおみやげとして幅広く知られるようになった。売り上げも順調に伸ばしてはいるものの、これを作れる職人の数が限られていることからやはり限られた数のグラスしか売り出せない。

「幅広く使われる商品になってほしい。でも生産は追いつかない」といううれしい悲鳴を上げているのが現状のようだ。

職人を大切にする会社

千葉県九十九里(房総半島の南部)にある菅原工芸硝子の工房には老若男女50名ほどの職人が日夜ガラス作りに励んでいる。
訪問したのは真夏の暑い昼下がりだったが、ガラスを溶かすため1200度に熱された炉を中心に円を描くように数名ずつのグループが黙々と商品を作り出していた。

冷房があったとしても炉の熱があるためきっと無用の長物だろう。じっとしていても玉の汗が噴出すような環境で真剣なまなざしの職人たちが大切そうに吹き竿のリレーをしている。

菅原専務のお話によれば、ガラスのデザインから製造までの全ての工程に関わることができるガラス工房は珍しいようだ。

ガラス作りを学んだ人たちにとって、自分が思い描いたガラスを作れる環境というのはとても恵まれているのだろう。毎年数名採用するそうだが、体力勝負の過酷な職場であっても、こうした魅力もあって若い女性からの応募が絶えないという。
もし九十九里の方に足を伸ばせるのであれば、毎日開催されているガラス工房の体験供出も是非参加してみてほしい。

関連記事一覧