「協働」とは住民と行政が共に悩み、知恵を出し合い、解決すること

近年「協働」という言葉がまちづくりのキーワードとして多用されていますが、では、「協働」というのは一体どういうことなのか、明らかにしておきましょう。


「協働」になるためには段階がある。

住民参加の概念については、米国の社会学者のシェリー・アーンスタインが「市民参加の梯子」という表現で説明しています。アーンスタインは「住民の参加とは、住民に対して目標を達成できる権力を与えること」と定義して、どの位置にいるかを確認しながら最終的な目標である市民管理を目指して一歩一歩進んでいくことが必要であるとし、そのステップを次のように示しました。
1.操作  :行政主導のまちづくり、説得型
2.セラピー:行政の一方的なまちづくりに対することへのガス抜き、治療的アクション
3.情報提供:情報をきちんと提供する段階
4.意見聴取:耳を傾ける段階。協議の場を設けたり、パブリックコメントを募る等。
5.懐柔  :いいとこどり。意見は聴くがそれを政策にどう反映するか、というときに行政がやりやすいことだけ取り入れる
6.協働:住民と行政が共に悩み、知恵を出し合い、解決する段階。立場は対等。
7.権限委任:市民の行政がもつ権限を委譲
8.市民管理:市民が管理

協働にいきつくためには「意見を受け止める、共有されている」というレベルまで行かなければ、達成できません。この段階を踏まなければ、住民とギャップが生じて、成果の上がる取組がなかなかとれないことが多いのです。
本当に住民のみなさんの意見を聞いて、それが行政にとってどういうエネルギーとなって、地域のエネルギーとなって、まちづくりに生かされるのか、そこの目的意識をしっかり持った協働のまちづくりを進めるというスタンスが無い限り、良い成果はなかなか得ることが難しいのです。
なぜ、協働のまちづくりが必要なのか。

それでは、なぜ協働のまちづくりが必要なのでしょうか。それには次の三つの視点から導き出すことができます。
・市民自治の視点
・住民の先見性
・行政の限界

それでは、それぞれの視点から「協働のまちづくり」の必要性を見て行きましょう。
○市民自治の視点
「市民は自らの暮らす環境の在り方に対して、必要な情報を共有し、自ら提案し、決定する権利をもつのと同時に、良好な環境の維持に対する責任がある。」というのが、市民自治の視点です。
例えば兵庫県宝塚市のまちづくり基本条例第2条には「まちづくりは、主権者である市民と市が、それぞれに果たすべき責任と役割を分担しながら、相互に補完し、及び協力して進めること(以下「協働」という。)を基本とし、…。」と規定し、主権者は市民であり、その信託を受けて地域のマネジメントをサポートしているのが行政という位置づけを明確に示しました。
また、神奈川県川崎市の自治基本条例第4条では「市民及び市は、次に掲げることを基本理念として市民自治の確立を目指します。(1) 市民は、地域社会の課題を自ら解決していくことを基本として、その総意によって市を設立し、地域社会における自治の一部を信託していること。(2) 市民は、その信託に基づく市政に自ら主体的にかかわることにより、個人の尊厳と自由が尊重され、市民の福祉が実現される地域社会の創造を目指すこと。(3) 市は、国及び神奈川県と対等な立場で相互協力の関係に基づいた自律的運営を図り、自治体としての自立を確保すること」と謳っています。
これらを見ると、「まちづくり」はそもそも市民に手を差し伸べる、のではなくて、主権者たる市民に権利と責任があるという考え方があるのです。
○住民の先見性
今まで、時代の変革期には常に生活者の視点から生まれる住民発意による取り組みが先行し、制度は後から生まれてきました。
神戸市丸山地区文化防犯協議会の設立(1965)→公害対策基本法(1967)
小樽運河を守る会の設立(1973)→伝統的建造物群保存地区(1975)
阪神淡路大震災の復興支援(1995)→NPO法(1998)
公益信託世田谷まちづくりファンド  都市計画法の改正
世田谷まちづくりセンター(1992)→都市計画提案制度の創設(2002)
時代を変革する制度ができあがる前に、住民が日常感覚のなかで、この街の変化が自分達のプラスになるのか、マイナスになるのか、その判断基準のもとに、様々なアクションを起こし、制度につながっていったといえます。これからの時代、変革期を迎えるなか、住民の知恵や力、感覚をどれだけ受け止めて施策にいち早く展開していくのか、その力が地域のなかで暮らしやすい環境を整え、これからの難しい社会を生き抜くのに大切な取り組みといるのではないでしょうか。
○行政の限界
個人のライフスタイルが多様化するなかで、公共サービスにおける求められるものも多様化・多角化し、行政が行えることに限界が生じてきています。NPO法の制定のきっかけとなった阪神淡路大震災時においても、災害に強いまちづくりというのは、行政が果たすべき役割も大きいですが、やはり地域住民の日頃からの取り組み、備えなしでは実現できないものです。安心で安全なまちづくり、子供がすくすく育つまちづくり、お年寄りが安心して暮らせるまちづくり、地域に誇りと愛着をもって暮らせるまちづくり、それらのテーマに関しては、行政にできる部分もありますが、住民自らの取り組み、住民同士のつながりのなかで生まれる力を抜きには考えることはできないのです。
「協働のまちづくり」こそが本来のまちづくり
これまでみてきましたように、本来「まちづくり」はそもそも市民の手にあり、行政では手の届かない、そして市民こそがよりきめ細かく、かつ先見性を活かした自治ができる存在であるのです。住民と行政が互いの得意分野、役割分担を担って、共に悩み、知恵を出し合い、解決していく「協働のまちづくり」を進めていくことで、本来の住みよいまちづくりが実現できるのではないでしょうか。

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