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大好きな地元でずっと暮らしていくために、仲間を作る。売上重視のビジネスモデルとは異なる若手女性経営者ならではの視点-熊本県・阿蘇市

「その値段では売れない」を覆し、年間1万7千本の目玉商品に成長

佐藤さんの作る阿蘇タカナードは、30gで770円と決して安くはない。売るのが難しいことは分かっていた。実際、地元ではその値段では売れないと言われる。しかし、採算を合わせるにはその価格設定でなければならないと考えた。

ところが、2016年に食品産業センターが主催する「優勝ふるさと食品中央コンクール」の新製品開発部門で、阿蘇タナカードは最高賞となる農林水産大臣賞を受賞。それをきっかけに、その後さまざまなメディアに出演を通して認知が広がり、2018年には年間1万7千本を売り上げるまでの目玉商品に成長する。

ビジネスパートナーを得て、事業が順調に回りだす

農林水産大臣賞を受賞したものの、メディアに出始めた頃は地元の反応は芳しくなかった。人づてに「自分だけいい思いをして」と言われていることも知った。そんな時、支えになったのはビジネスパートナーの宮本龍(みやもと・りゅう/31)さんの存在だ。

阿蘇さとう農園で宮本さんは「コミュニケーションデザイン部 タカナード販売担当」を担当している。主にタカナードの販路拡大や、佐藤さんと取引したい人との間に入りさまざまな調整を担っている。佐藤さんが苦手とする部分を宮本さんが補うことで、ビジネスが上手く回っているようだ。

宮本さんとビジネスパートナーを組むことでタカナード事業は順調に回りだし、メディアへの露出や都市部での高い評価を追い風に、徐々に地元でも理解を示す人が増えている。

地域を存続させるために必要な若手農業者の育成

現在、タカナードの製造はパート従業員にまかせている。佐藤さんが力を入れつつあるのは、人材育成だ。農業従事者が集まる青年クラブの会長も務める佐藤さんは、若手農業者を経営者として育成する必要性を強く感じている。親の代から農業を営んでいる家で農業に参入するのは難しいことではない。しかし、作物を栽培するだけの“作業者”の感覚では、農業を事業として軌道に乗せていくのは難しい。数年前には、わずか数百万円の借金で自殺した若手農業者の例もあった。「借金は悪」という思い込みを変えられていたら、助けられたのではないか、と佐藤さんは考えている。

自分の事業だけを成功させるなら、あえて自分のエネルギーを割いて人材育成まで担う必要はない。「よそはよそ、うちはうち」という感覚でもよいのではないか。そう思いたずねてみると、佐藤さんはこう話してくれた。

私は、阿蘇が大好きでこれからもずっと阿蘇で暮らしていきたい。そのためには、阿蘇が地域として続いていく必要があると考えています。でも、そのためには仲間が必要です。だからこそ、人材育成なんです。世の中がよくなることを、適正な対価を得ることでちゃんとやり続けていく。そんな仕組みを作れたらいいなと思います。

地域の存続、地域の底上げに力を入れることが、自社の成長につながると考えている佐藤さん。自社製品の売上拡大だけを重視するビジネスモデルとは考え方が異なる。地域に真摯に向き合うこの考え方は、人口減少や高齢化で悩む農村部の解決策の1つになるかもしれない。

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