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地方の若手畜産農家の挑戦-「キツくて儲からない」農業のイメージを変えていく

農家になること以外、考えられなかった

天草には大学がないため進学を希望する人の多くは、一度は天草を離れることになる。倉田さんもその一人。沖縄の大学に進み、主に植物の光合成を学んだ。「子どもの頃から農家になること以外考えられなかった」という。

「農業はやめろ」という周囲の大人たちの言葉を聞くうちに、倉田さんは「農業は本当にキツくて儲からないのか。それが本当なのか自分が試してみよう」と思うようになる。そして「どうせ農業をやるなら、最も大変だと言われる畜産をやってみたい」と考えた。

大学を卒業してから、倉田さんはアメリカで2年ほど現地の牧場で勉強した後に天草に戻った。元々、柑橘農家だった家で畜産を始めてから12年が経つ。倉田さんはわざわざ農業の中でもキツイといわれている畜産を選んだ。実際にやってみてどうだったのだろうか。

農業はたしかに大変ですけど、儲からないわけではありません。実際、収入は柑橘と牛が半々になっているので牛を始めてよかったと思います。ただ、和牛の価格は上がっていますが、生産農家は増えません。生き物相手で休めないということもあり、おそらく一般的なサラリーマンの1.5倍は働いていると思います。好きでないとできないのは確かでしょう。

人手不足の農業で人手を確保する方法

地方はコミュニティが小さく必然的に知り合いが多くなるため、ちょっとした話ができる人は多い。一方「新しいことに取り組もうとする人は少ないと感じる」と、倉田さんは話す。

たとえば、耕作放棄地の場合。地方では田畑を使わなくなっても、持ち主は草刈りなどの手入れを定期的に行っている。そのような土地に牛を放牧すればわざわざ草刈りをする必要はなくなるが「牛が水質を汚染する」という誤った認識を持つ人がいることもあり、放牧スタイルは日本ではまだまだ一般的ではない。しかし、倉田さんのところではすでに放牧に取り組んでおり、今後、放牧用の土地を新たに借りる目処もたっているという。

将来的には法人化も視野に入れて経営をしていくと話す。しかし、規模を拡大すれば、今後人手の確保が大変になっていくのではないだろうか。

だからこそ法人化することが大切なんです。農業を組織化して、生産性を上げるだけでなく社会保障を整えることで、農業の担い手を確保したいという狙いもあります。

地方での仕事に「農業」を選ぶメリット

現在、倉田さんには3人の子どもがいる。1人は先日生まれたばかりだ。「農業は子育て世代にとっていい仕事だと思います。」子どもは小さなうちは病気になることが多く、たびたび保育園や学校から呼び出しを受ける人も多いだろう。そんなときでも比較的柔軟に対応できる農業には、勤め人にはないメリットがある。

また、特に畜産業の場合は命あるものを扱っていることもあり、仕事を通じて教えられるものが多いという。

農業の社会的なイメージは低いかもしれませんが、実際には農業にも幅広い知識や視野が必要です。子どもたちが農業をやりたいと言っても、いきなりこの世界に飛び込ませるのではなく本人が希望すれば大学に行かせたり、留学の機会を作ったりしてやりたいと思っています。

倉田さんは、地元の高校で話をすることもある。職業としての農業を次世代に伝えたい、と考えているからだ。自ら、水先案内人となろうとしている倉田さん。天草で挑戦を続ける若手農業経営者が、農業のイメージを変えようとしている。

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