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『縫製業のまち』から、国産Tシャツブランドを発進!戦略的移住のススメ-岩手県久慈市

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岩手・久慈の地で『国産Tシャツ』づくりに取り組む、香取正博さん(写真右)

岩手県沿岸北部にある久慈市。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』のロケ地として広く知られている一方で、実は縫製業が盛んな地域だ。久慈には、作業服や道着、高級ブランド服など高い技術を必要とする製品を作っている企業が数多く集まっている。国産のアパレル産業を支えていると言っても過言ではない。

そんな久慈に、東京からIターン移住した香取正博さん。彼は2年前、アパレルブランド『9o’clock(ナインオクロック)』を立ち上げた。元々は千葉県出身の美容師であり、久慈には全く縁が無い筈だった香取さんが何故地方に移住しアパレル業界へ足を踏み入れたのか。話を伺った。

『地方創生』の波に乗る

“ローカル・アベノミクス”とも呼ばれる、東京一極集中に歯止めをかけることを目的とした地方振興の政策がなされている昨今。地方への移住や地方の活性化に繋がる活動を行なうことが社会的に評価される傾向と言える。

地方創生が一つの“ブーム”とも言える今、地方から『国産Tシャツ』をバンバン売って儲けていきたいと率直に思っていました。

『地方創生』がフォーカスされる今、香取さんはそこに目を付けた。かねてから考えていた『国産のTシャツづくり』を実現したい。そんな思いを胸に、香取さんはある日“縫製業”というワードで検索をかける。

ヒットしたのは、久慈市だった。

地方で活動するメリットを活かして

早速、香取さんは移住を決意し、ナインオクロック株式会社及びブランド『9o’clock(ナインオクロック)』を立ち上げる。

ブランド名は“久慈→9時→ナインオクロック”という地域の名前をもじって名付けられた。『国産Tシャツ』という話題性、そして『地方へと移住して起業』という香取さんの取り組みは共感を生み、地方メディアからの注目も集めていく。

今はSNSもあるし、誰でも情報発信ができます。工夫と意欲次第では、地方に住んでいる方が逆に目立つこともできるんです。

香取さんのSNSやブログには、香取さんが持つ等身大の思いや考えが綴られている。時には地域や行政への苛立ちなど、ダイレクトな意見を交える一方で、久慈の魅力も率直な思いで記されている。少し棘のある等身大の記事にはファンも多い。

香取さんの行動力とキャラクターにより、ナインオクロックの知名度は、久慈を中心地として高い注目を集めるようになっていった。

競争相手不在の環境で抱えた葛藤

高まっていく、ナインオクロックの存在感。その一方で、ライバルも若い起業家も少ない環境ではモチベーションの維持が大変だと香取さんは話す。地方特有の“のどかな雰囲気”に飲まれそうになる。香取さんは、危機感を覚えていた。

久慈は、トレンドや情報が入るスピードがどうしても遅くなる。ブランドとしては、今色々と仕掛けていかないと飽きられちゃいますから、色々なアイデアを考えています。

その思いから、香取さんは久慈市より人口の多い盛岡市にセカンドハウスを借りた。都会的な場所で刺激を得る機会を作らなければならないと考えたからだ。盛岡で知り合った方と交流し、アイデアを創るためのエネルギーを貰うことが自身には大切だと感じていた。

視点を変えて地域の魅力を引き出した

久慈と言えば、やはり『あまちゃん』をイメージされる方が多いのではないだろうか。しかし、香取さん自身は『あまちゃん』を見たことがないそうだ。

『あまちゃん』ファンの観光客は、久慈市が縫製業の町であることを知らない人が多いのではないか。香取さんはそう仮説を立て、2017年に『「みんなでくじTを着よう!」縫製の街・久慈を盛り上げたい!』というクラウドファンディングを行なった。国内で流通する衣料品が3%台に落ち込んでいる課題、そして久慈の縫製技術の素晴らしさを訴えたことが共感を呼び、香取さんの取り組みは複数のSNSやブログなどで拡散されていく。

結果、この挑戦には目標金額を大きく上回る144万円以上の協力金が集めることになる。さらに2018年1月~2月には、新商品となるZIPパーカーの先行販売をクラウドファンディングを使って行ない、目標額を上回る結果を達成した。久慈発のブランド・ナインオクロックにファンがついてきた証と言える。

ファストファッション以上の利便性と価値を

最近、香取さんはインターネットでオーダーTシャツのサービスを始めたそうだ。サイズやカラーだけではなく、素材やポケットの有無やポケットの形、さらにはネックの形・ネックの深さなどを選ぶことができる。高品質のシンプルな無地Tシャツだからこそ、着る人の体形や用途に合うものを選ぶことができるのは嬉しいサービスだ。

お値段は一律3,990円。ファストファッションブランドのラインナップと比較して価格は多少高めに設定されているが、送料・交換無料でありどのデザインでも値段が変わらず、品質も高いことから価格以上の価値を感じられるだろう。Tシャツやパーカーのタグに書かれた『MADE IN KUJI』の表記も、地方を応援する価値を生んでいると言える。

地方で得た『オンリーワン』の存在感を、都心でもリンクさせる

取材を受けると『地方の良さ』を聞かれることが多いのですが、ただ“田舎が素晴らしい”と言うのはちょっと違います。僕の場合は田舎でも都会でも一人暮らしですから、そう生活が変わるわけではないです。

地方での生活も慣れれば“普通”になる。久慈には大型商業施設が無いが、2時間ほど車を走らせればアクセスは可能だ。久慈から東京までも、新幹線を使えば3時間半ほどで行ける。慣れてしまえば問題はない。

しかしながら、香取さんは地元である千葉・東京・岩手の3拠点で生活するのが理想だとも言う。起業家には様々な場所で刺激を受ける必要があるのかもしれない。その実現のためには現在のオーダーTシャツ事業を拡大し、百貨店との取引なども行なっていきたいそうだ。元々は美容師の香取さんは「美容関係事業も、いずれ立ち上げていきたい」と話す。

「都会は、人も企業も溢れていて飽和状態だ。」そんな思いを抱え、起業を目的として地方に移住する人は少なくない。“地方起業家”は同じような業種でも、地域が異なれば特性も全く異なる。そのため、地域において『オンリーワン』になれるというメリットがあるのだ。

移住起業家には“地域先行で事業を考えるタイプ”と“事業内容で地域を選ぶタイプがある”と私は考える。香取さんは後者だ。当初は戦略的な思いも抱えて移住したものの、2年も経てば飲みに行く仲間もでき、楽しく過ごせていると話す香取さん。今回の取材を行なった久慈市内のビストロで、名物の生うにパスタに舌鼓を打つ様子からも久慈での生活を満喫しているように見えた。

香取さんの挑戦は始まったばかりだが、アメリカン・ドリームならぬ“地方ドリーム”が叶えられるとなれば、地方の未来は明るくなるだろう。

【ナインオクロック株式会社】https://9oclock.co.jp/

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