酒蔵で地域と世界をつなぐ、Uターン女性きき酒師の挑戦

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秋田県が故郷である私にとって、日本酒やそれを造る酒蔵は非常に馴染み深い存在だ。酒蔵は、地域と共に成長し、地域の文化や行事を支える中核を成してきた。地元の花火大会やお祭りなどに多くの協賛を行い、それが地域の賑わいを支えてきたのだ。

しかし、他のアルコール飲料との競合により、酒造会社の経営状況は厳しいものになった。ピーク時には170万kℓ超えていた日本酒の国内出荷量は、2008年まで大幅に減少し、現在は60万kℓを割り込んでいる。

近年、日本酒ブームと海外向け出荷量の増加により、酒造会社の取り組み方にも変化が生じている。また、輸出量が拡大しているとはいえ、日本酒の全出荷量のうち輸出量が占める割合は、2015年時点でわずか3.2%。まだまだ、世界展開の可能性が残っている。

そのような状況の中、茨城県北で地域の酒蔵巡りをきっかけとしたインバウンド誘客を実現し、地域活性化を目指そうという女性起業家がいる。「SAKE TAXI」を企画・運営する細金寛子さんにお話を伺った。

酒蔵巡りで地域のファンづくり

細金寛子さんは、2018年2月10日に開催された茨城県主催の「ビジネスプランコンペティション2017」で最優秀賞を受賞した。その時のビジネスプランが、「SAKE TAXI -酒蔵巡りを通じた地域ブランドの向上-」だ。

茨城県北エリアの地域資源である酒蔵をタクシーで巡る旅を提供しながら、茨城県外・海外へ向けた地酒普及のための企画・コンサルティング事業を行う。細金さんに、これまでの経緯や事業にかける想いを聞いた。

世界へ日本酒の魅力を伝えたい

細金さんは、茨城県の北部にある高萩市出身。大学院博士前期課程修了後、都内の不動産開発会社や経営コンサルティング会社で勤務した後、カンボジアの首都プノンペンで不動産開発のプロジェクトに携わった。

海外でのプロジェクトをきっかけに、地酒を学びたいと思うようになりました。

日本の魅力、地酒の魅力を世界中の人にもっと知ってほしいと思い、国際唎酒師(ききざけし)の資格も取得しました。

国際唎酒師は、日本の酒文化や食文化の諸外国への普及を目指すSSIインターナショナルが認定する資格で、日本語以外の外国語を用い、消費者に日本酒の提供・販売が行なえる人財育成を目的としたものだ。

「自分の大好きな地酒の魅力をもっと伝えたい。」という細金さんの想い、そして、海外でのビジネス経験が、今回のビジネスプランの大きな支えとなっている。

年間4800人減少する故郷のために

細金さんは、東京・海外で働いた後、茨城県にUターンした。そこで、人口減少による地元経済の衰退に直面した。茨城県北では、年間で4800人もの人口が減少している。1人あたりの年間消費額を124万円として試算すると、その損失額は約60億円に及ぶ。

地元である茨城のために、自分にできることは何かないかと考えました。

そこで、自分の大好きな地酒と自分のこれまでの経験を組み合わせた訪日外国人向けのサービスを通じて、地域の魅力を伝えてファンづくりをしようと決めました。

酒蔵巡りを行うと考えた際、「酒蔵が点在していて、駅からも遠く、車を運転して移動すると試飲できない。」という問題が浮かび上がってきた。その解決策として生まれたのが「SAKE TAXI」だ。

実現のための地域との連携

細金さんは、県内外の女性を中心とした顧客層を対象に、茨城県北エリア(常陸太田市・日立市・常陸大宮市・大子町)の酒蔵を巡るSAKE TAXIのテストマーケティングを行いながら、生の声を集めている。

このプランの実現には、地域の酒蔵さんやタクシー会社さんの協力が不可欠です。

見学可能な県北の全酒蔵を巡って、現場のリサーチと信頼関係の構築を行ってきました。また、タクシー協会の方々とお話をしながら、様々なご協力をいただいています。

その他にも、地元ホテルとの「SAKE TAXI宿泊プラン」の検討や都内でのイベント開催企画なども始まっている。Uターンした若者が、地元企業と連携し、地域の経済を動かし始めている。

地域に必要な顧客視点

地域から外に情報を発信し、魅力を伝え、購入や訪問につなげるために、不可欠なものがある。それは、顧客視点だ。

地域の事業主体者自身が、地域外の顧客に対する新規サービス提供やプロモーションを行おうとして失敗する大きな原因として、顧客視点の欠如が挙げられる。

細金さんの強みの1つとして、東京や海外とのつながりや人脈がある。実際の顧客ターゲットを対象に、テストマーケティングを繰り返しながら、サービスを改善し続けることで、より顧客価値の高いサービスを提供することができるはずだ。

Uターン起業家が描く未来

人口減少が進む地域において、このような外の視点や外とのつながりを持つUターン起業家は貴重な人財資源だ。細金さんは、ビジネスを通じて次のような未来を描いている。

「SAKE TAXI」という観光の動線をつくることで、酒蔵だけでなく、その周辺にある観光地などにも目を向けてもらいたいです。

1人でも多くの人が「茨城県北に行きたい!」と思い、行動してもらえる仕組みをつくります。それによって、持続可能な観光のプラットフォームづくりに貢献したいです。

細金さんは、2018年5月13日にSAKE TAXIを実施する予定。地域の資源を活かし、地域の課題を解決する取り組みに注目したい。

参考資料

「日本酒をめぐる状況」(農林水産省 平成28年3月22日)
「平成27年版 情報通信白書のポイント」(総務省)

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