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広島のソーシャルブックカフェに、なぜ面白い人たちが集まる?キーワードは、「社会ごと=自分ごと」

広島の平和記念公園のすぐそばに、昨年夏、「Social Book Cafe ハチドリ舎

が誕生しました。「ソーシャルブックカフェ」って何だろう?と思われる方も多いかもしれません。その答えは、カフェに入ると一目瞭然。平和や戦争、人権、哲学など、さまざまな社会的なテーマの本が並んでいて、お茶やご飯をいただきながら自由に読むことができます。ウッディで素敵な空間に、冬場はこたつもあって、居心地も最高。

でも、このカフェはそれだけじゃないんです。毎日のように、世代も国籍も職業も性別も、さまざまな人たちが集まってきます。遠方から、はるばる訪ねてくる人もいます。なぜなのでしょう?

「一人ひとりが、社会の主人公」。たくさんの主人公が羽ばたくカフェの誕生。

ソーシャルな本がたくさん並び、自由に読める店内

このカフェを立ち上げた安彦(あびこ)恵里香さんは、かつて国際NGO「ピースボート」に勤め、転勤を機に広島に移住。以来約10年にわたり、核廃絶や平和を目指して、広島で活動してきました。世界のさまざまな問題で苦しむ人たちがいることに対して、「傍観者でいたくない」という想いからです。

安彦さんのアプローチは、いつも斬新。アーティストたちが核兵器をテーマに表現するアートブック「NOW!」、原爆投下時刻に一斉に空を見上げるアートアクション「みあげる」、夏に広島・長崎で行われる100を超える平和イベントを検索できるウェブアプリ「Peace Week Hiroshima Nagasaki」など、たくさんの人を巻き込みながら、パワフルに動いてきました。

©石田純平(Get Hiroshima)

そんな安彦さんが、大切にしている想いがあります。

それは、「思考停止しないこと」「一人ひとりが社会の主人公になり、発信者になること」。たくさんの人が、平和や社会の課題について主体的に考え、発信し、誰かとつながって、次のアクションが生まれるような場を作りたい。カフェを思いついた日、フェイスブックでそのアイディアをつぶやくと、500件以上のいいね!が。そこから半年もしないうちに、ハチドリ舎は生まれたのです。

みんな手伝わずにはいられない!社会への想いがつないだ、オール手づくりのカフェ

ハチドリ舎は、漆喰や木などすべて天然素材で作られた、気持ちのいいカフェ。実は、ここは元々雀荘が入っていた場所でした。タバコの匂いが染みついた雀荘が、今の姿になるまでには、たくさんの人の助けがありました。

ヤニ落としや掃除に始まり、漆喰やペンキで壁を塗るなど、一からできるかぎり自分たちでやりました。

カフェで使う椅子やコーヒーカップ、本棚、クッション、時計なども手作りです。振り返れば、100人近い人たちが手伝ってくれました。世代もさまざまな友人たち、そこから点と点がつながるように、大工さんや左官屋さん、木工所の人などとつながり、次々とハチドリ舎に集まりました。工事が始まった時、まだ十分にお金も確保できていなかったのですが、皆さんがほとんどボランティアで協力してくれたんです。

たくさんの人たちが、カフェづくりを手伝う。

私は、母から「人に助けを求めるのが苦手なのに、本当にカフェを開店できるの?」と心配されたくらい、無理してまで人に頼むことができない。

協力してくれた人にとってメリットや楽しみ、相乗効果がある形にしたいと思いました。そこで、漆喰塗り、椅子づくり、コーヒーカップづくりなど、あらゆる準備作業を、誰でも参加できるワークショップやイベントにしたんです。

みんなが楽しめるだけでなく、経験やノウハウを持ち帰ることができる。それぞれの活動のPRや人脈にもつながる。ただ、これだけ多くの人が手伝ってくれたのは、それ以上の想いがあるからです。安彦さんの平和や社会への想いや、今までにないオルタナティブな場を作ることに、たくさんの人が共感し応援したいと思ったから。ハチドリ舎の始まりそのものが、たくさんの人たちの行動の一歩を生み出したのです。

お客さんも、コーヒー豆を挽く。コーヒーから社会まで「自分でつくる、行動する」。

ハチドリ舎では、つながりのある地元の生産者や店から仕入れた、オーガニック素材でごはんを作っています。フェアトレードコーヒーやオーガニックワイン、地場産のジュースなど、飲み物にもこだわりが。Bean to Barのチョコレートも売られています。面白いのは、セットメニューがなく、すべて自分で組み合わせてカスタマイズすること。キーマカレー+ベーグルの人もいれば、ごはん+生卵+味噌汁の人もいます。

コーヒーだって、自分で豆を挽いて淹れるのもOK。やりたい人は、生ビールをついだり、ご飯や飲み物を自分でよそったりすることもできます。こうした仕掛けには、「つくる楽しさ、自ら行動する大切さ」を、楽しみながら感じてもらいたいという想いがあります。こんな日々の小さな積み重ねが、社会に対する意識や姿勢を形づくっていくように感じます。

平和や哲学から、映画会に坊主バーまで! 多彩なイベントに、居心地のいい空間に、集う人びと

被爆者の方とお話できる日。

ハチドリ舎では、毎月イベントカレンダーがぎっしり。そのほとんどを、安彦さんが中心となって企画していますが、テーマの多彩さに驚かされます。例えば、毎月6がつく日(6日、16日、26日)には、被爆者の方たちが1日中カフェにいて、友人とお茶でもするかのようにお話ができます。被爆者自身が英語で体験を語ってくれる日には、外国人観光客や留学生もたくさん訪れます。

その他にも、さまざまな社会的テーマの映画上映会、高齢化社会を考える「もう高齢社会だヤバいよシリーズ」、地域のお坊さんとビール片手に語り合う「坊主バー」。政治や戦争、哲学、環境、医療など、さまざまな分野で活躍する人たちとのトークセッション。

かと思えば、子育ての話を聞きに、赤ちゃんを抱えた母たちが集まる日もあれば、手づくりマーケットが開かれる日も。先日行われた「広島の若者が語る、平和教育と私たち」というイベントも、10代の若者たちがたくさん参加し、大きな反響があったそうです。さらに週に何日かは、気がねなく社会ごとを話せる夜の酒場「ソーシャルスナックえりか」もオープンしています。

坊主バーは人気が高く、これまで何回も開催されている。

ハチドリ舎に来るお客さんは、赤ちゃんから90歳近いおじいちゃん・おばあちゃんまで世代も幅広く、関心もさまざまですね。一つのテーマで集まっても、色々な意見や立場の人がいて、いい意味で議論が生まれることもあるし、あまり接点がなかったような人同士がつながったりもします。

英語で語る哲学カフェが開催された時のことです。ふたを開けてみれば、元平和文化センター理事長のスティーブン・リーパーさんをはじめ、さまざまな分野で活躍する広島の外国人キーパーソンが、一挙に集まってきたんです。これまでつながっていなかった人同士もつながって、とても嬉しかったですね。

社会的なテーマに興味がなくても、居心地の良さに惹かれてカフェに来るお客さんも、たくさんいます。そこで、ふと社会のことを考えるチラシを手にしたり、イベントに参加したりすることもあります。色々な人が訪れやすいように、安彦さんは「ゆったりと居心地のいい空間」を追求しています。

コタツのある小上がりで、たくさんの赤ちゃんがゴロゴロして、そばではお母さんたちがリラックスしておしゃべりをしている。そんな光景を見ていると、幸せな気持ちになりますね~。

誰にでもオープンな「持ち寄り企画会議」。考える、決める、やってみる!

安彦さんが、ハチドリ舎をやってきた中で、改めて感じていることがあります。

今の世の中、自分で考えたり決めたりすることができない人が、結構多いなと感じます。例えば、これはどう思う?と意見を聞いたのに、相手は答えを求めてスマホで検索を始めた、なんていうこともありました。自分で考えて、動いて、責任を持ってやってみる。一人ひとりが、主体性を持っていくことって、とても大切だと思います。

社会の主人公として行動する人を増やしたい。本当はやってみたいけど、ちょっと自信がない人の、背中を押してあげたい。そんな想いを改めて強くした安彦さんは、今年から「持ち寄り企画会議」というイベントを始めました。

こんなことやってみたいなと思った人は、誰でも参加してアイディアをシェアできます。企画のやり方や発信の方法など、さまざまなヒントも伝授。この会議から生まれた、蜜ろうハンドクリーム作りのイベントも、先月開催されました。

社会のことに興味がない人に、無理やり興味を持ってもらうのは、なかなかできないと思うんです。でも、今何かに興味がある人が、ここをきっかけに知識を深めて行動していってくれれば、その周りの人やコミュニティが変わっていく。そういう人を一人でも増やしていくことが、一番効果的かなと。

ハチドリ舎のイベントに参加した大学生が、平和イベント成功のために奮闘していると知れば、これまでの経験や知識、ヒントを惜しみなくシェア。色々な人の背中をそっと押してあげる、安彦さんの姿があります。

地域とのつながり、目指せ!子ども食堂。

ハチドリ舎には、ご近所に住む人や同じビルで働く人など、地域の人たちも立ち寄ります。町内会に入り、地元のお祭りの手伝いもしながら、これからもっと地域に関わっていきたいと思っているそうです。そんなハチドリ舎が、今やりたいと思っていることの一つが、「子ども食堂」。

見えない貧困がはびこっているのに、本当に困っている人は、なかなか助けを求められない。子ども食堂に興味を持っていた時に、同じように子ども食堂をやりたいという女性が、たまたまハチドリ舎にコンタクトしてくれたんです。

東京でバリバリ仕事をしていたけれど、介護のために広島に戻ってきたレイコさん。お料理が上手だと聞いて、夜に営業する「ソーシャルスナックえりか」で、定期的に夜ご飯を作ってもらうことに。その売り上げはすべて、子ども食堂をオープンするための準備資金にします。

人と人とのつながり、地域とのつながりから、風が吹くように新しい活動が生まれています。

誰もがここに来れば、支えあえるカフェに。やさしさが、人と人、人と社会をつなぐ。

安彦さんに、これからのハチドリ舎への想いを聞きました。

自分のことと社会のことを、切り分けて考える人も多いけれど、みんな社会とつながっています。誰かが駅で倒れている、道端に自転車が転がっている、そんな日常の瞬間に、誰かのために何かをする。それも、社会とのつながりです。
シンプルに言えば、お互いやさしくなろうよ、と。お互いが助け合い、支えあい、自然に人や社会のために何かをする。ハチドリ舎で、そういう気持ちを醸成していきたい。そういうことの積み重ねが、社会を良くしていくと思うんです。

これから目指していることは、ずっと続けていくこと。続けることで、たくさんの人が集い、つながっていく。子どもから大人まで色々な人がやってきて、何でもサポートしてあげられる場所にしたい。誰でも助けてあげられるような、そんなオバちゃんになりたいです(笑)。

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