20年で従事者が約半減、秋田の伝統工芸の課題と挑戦

伝統工芸品が、日常の中にあった日本。

習字で使用する文鎮や硯、嫁入り道具として大切に使われた箪笥、特別な時に使用する重箱など、日本の長い歴史の中で、日常をより豊かにする様々な物が手工業でつくられていた。

現在、全国には約1200品種の伝統工芸品があると言われているが、時代の変化に伴って大量生産された商品が普及し、伝統工芸職人の人財育成が難しくなり、後継者不足となっている。

私の故郷である秋田県でも、この様な危機的状況は変わらない。しかし近年、この状況を打開しようと、若手職人と地元企業の連携による新たなチャレンジが生まれている。

伝統的工芸品の現状と課題

日本に多数存在する伝統工芸品の中で、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて、経済産業大臣が指定した工芸品が「伝統的工芸品」だ。

平成27年6月時点で、日本全国にある222種の工芸品が伝統的工芸品に指定されている。秋田県では、樺細工・川連漆器・大館曲げわっぱ・秋田杉桶樽の4種が指定されている。

20年で従事者が約半減

伝統的工芸品の業界は、日本人の生活様式の変化、大量生産品・輸入品などの安価な商品の普及によって、生産額・従事者共に減少傾向にある。

秋田県の伝統的工芸品4種で見てみると、平成4年に1240人いた従事者が、平成24年には613人に減少。生産額も、同年の約46.3億円から約23.7億円に減少。20年間の間に、従事者・生産額が約半減しているのだ。

伝統的工芸品産業の課題

経済産業省や秋田県の報告書を見ると、ニーズの低迷・人財の不足・生産システムの脆弱性・原材料の調達難・知名度不足などが挙げられている。

秋田県では、この様な課題に対して、「どうすれば、自分たちがつくっている伝統的工芸品の魅力を伝えられるか」を考え、自ら行動を起こす若い職人が出てきている。

全国初の伝統工芸×レンタカー

画像:@Press

株式会社ドラグーン(本社:秋田県秋田市、代表取締役:鎌田 学、運営店舗:ラビット秋田臨海店・100円レンタカー秋田臨海店)が、全国初となる「ご当地レンタカー事業」に取り組む。

これは、「走る伝統工芸で、寄り道の旅。」をコンセプトに、秋田の伝統工芸の技術を用いて車内装飾を施した特別仕様の「おもてなしレンタカー」を観光客に貸し出す事業だ。

100円レンタカー秋田臨海店にて、6時間で8000円・12時間で10000円・24時間で12000円という料金体系で、2018年2月2日からレンタル予約を開始した。

伝統工芸職人からのアイデア

このレンタカー事業は、秋田県の南部に位置する湯沢市で800年以上続く伝統的工芸品「川連漆器(かわつらしっき)」の若手職人たちのアイデアから始まった取り組みだ。

川連塗りの新しい可能性を広げるべく、その技術を応用して自動車の車内部品を装飾して商品化を試みたいのですがいかがなものでしょう?

そこには、どうすれば伝統的工芸品の魅力を後世に残していけるかという想いがあったという。

秋田の伝統工芸レンタカー

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そのアイデアが地元企業との連携でビジネスとなり、秋田の伝統工芸とレンタカーを組み合わせてできたのが「おもてなしレンタカー」だ。

ハンドルとコンソールパネルは「川連漆器」の技術を用いて漆で仕上げられ、ウインドウスイッチパネルは山桜の樹皮を素材とする木工品「樺細工(かばざいく)」の技術で装飾が施されている。また、天井とシートには、草木染めの高級絹織物「秋田八丈(あきたはちじょう)」が使われており、高級感と地域性の両方を感じられる仕様だ。

地域の魅力を発信し、特別な体験を通じて地域を好きになってもらいながら、地場産業を盛り上げようとする事例として注目していきたい。

伝統工芸と「不易流行」の精神

今回のレンタカーで話に出てきた「川連漆器」の伝統工芸士・佐藤史幸さんに、以前お話を伺った際、この様なことを仰っていた。

知恵をもって、地元のものを自分たちで生み出していく「地産知生」を目指しています。

伝統とは、伝承ではない。秋田県にも、昔からあるものを見直したり、再構築したりしながら、「不易流行」の精神で次代へ受け継ごうと行動を起こす「つくり手」がいる。

地域と伝統文化を守る

伝統工芸を含む伝統文化は、地域と共に受け継がれてきたものだ。伝統工芸の課題を考える際、地域のブランドを伝えることは重要だ。

佐藤さんも、漆器だけでなく、故郷の食と文化を全国へ伝え続けている。自分の想いや故郷の魅力を伝えるためにSNSを通じて、3年ほど毎日情報を発信しているという。

その結果、佐藤さんのお客様が地域の魅力を知り、実際に秋田を訪れ、現地での体験を通じて、地域とお客様の繋がりが生まれている。

地域の魅力を伝えることで、伝統工芸を次世代へ受け継ぐチャレンジは、これからも続く。

参考資料

「伝統的工芸品産業をめぐる現状と今後の振興施策について」(平成20年8月 経済産業省)
「伝統的工芸品指定品目一覧[都道府県別]」(平成27年6月 経済産業省)
「新あきた伝統的工芸品等振興プラン」(平成26年3月 秋田県)

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