マイナンバー後進国日本。カード普及率10%未満だが、整備に期待。

マイナンバー法の施行から、2017年10月で2年が経過しました。政府は、マイナンバーカードのメリットを訴求し、普及を訴えていますが、申請手続きの煩雑さ等がネックになり、マイナンバーカードの交付件数は1250枚、普及率は10%にとどまっています。
 
年金や税金をはじめ、国の制度や、地方自治体に関する制度でも活用が進むロードマップが引かれているマイナンバー制度。普及の遅れもあり、恩恵を受ける機会が少ないかもしれませんが、制度の理解と活用への関心が重要でしょう。

マイナンバー制度の2つの大きな課題

マイナンバー制度と、それに伴うマイナンバーカードの発行にともなう課題は、大きく2つ上げられます。1つは、管理や申請手続きが煩雑なこと、2つめが、普及が進まないことが上げられます。

マイナンバー制度によって、個人情報に関する仕事上のやりとりが煩雑になったと感じている方が多いようです。

2016年からは、企業において、社内だけでなく、デザイナー等の個人事業主や、アルバイトからもマイナンバーを収集するケースが出てきています。

その際のやりとりが、オンライン上で完結すれば良いのですが、多くの場合、紙での提出のやりとりが行われています。これは、紙でのやりとりが推奨されているわけではなく、政府が示している「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」に適合した処理をしようとすると、結果的に紙になっているというケースが多いようです。

煩雑な処理に、このような制度趣旨と本末転倒になってしまった例も指摘されています。

マイナンバー制度に対する最もよく聞かれる懸念が、情報漏えいのリスクを指摘するものです。政府もこの点に関しては、理解しているといえ、個人情報の漏えい等を防ぐために、厳しい基準を設けています。

マイナンバーの安全管理措置として、取り扱う人から、保管場所、管理運営に至るまでのガイドラインを定めています。その際に、パソコンでの管理に関する項目もあるのですが、セキュリティ対策や、その使用制限に関する項目が多く、多くの企業で面倒だと捉えられてしまっている状況になっています。

国や自治体がもつ、公共サービス等のデータを集約・管理しやすくするというマイナンバーの制度趣旨にも関わらず、現実は各企業ごとに、紙の書類が蓄積されているという状況になっているわけです。

最大の目玉は情報連携による一括管理

マイナンバー制度の最大の利点は、複数の機関に存在する特定の個人に関する情報を、同一の人物に関する情報だということの確認を行い、社会保障や税制度の効率性と透明性を高めることです。

つまり、マイナンバー制度によって、利便性が高くなり、公平・公正な公共サービスの提供につながるといえます。

これらは、マイナンバー制度における情報連携という表現で、各種申請や、管理がスムーズにやりやすくなるといわれています。情報連携により、国民の負担が軽減し、各種申請等も簡略化されるため、環境にも良いなど、良い部分に目を向けると、とても頼もしい取り組みだといえます。

2017年からは、部分的にですが情報連携も始まっており、その認知度には課題を抱えつつも、着実に進行しています。

個人情報が一元管理されるわけではない

よくある勘違いとして、個人情報の管理が、どこかに集約されて一元管理されるという懸念があげられますが、事実とは異なります。

実際は、分散管理の方法がとられ、各行政機関が必要な情報を管理し、必要とされる際に、相互に参照が可能になるという状態が作られています。

マイナンバーカード取得促進のための動きも

現在10%程度となっているマイナンバーカードの取得率を高めようという取り組みも活発に行われています。

例えば、宮崎県都城市では、タブレット端末を利用したカードの申請補助を窓口で受け付けたり、公民館や商業施設等で特設会場を設置し、申請機会を増やすなど、積極的に取り組んでいることで知られています。

中でも、都城市地域経済応援ポイント活用事業として、マイナンバーカードにポイントをため、それを地域商店街やウェブサイト上で活用し、地元の産品を購入できるようにするという事例があり、注目されています。

このように地方自治体においても、マイナンバー制度の認知拡大と、カード利用による利便性の向上が取り組まれています。

社会課題解決につなげられるかがどうかが重要

マイナンバー制度をはじめるにあたっての初期費用は2000億円から4000億円ほどとされています。その上で、年間の管理運営費に数百億円かかるシステムとなっています。

しかしこれだけの投資を行う価値があるのは、そのメリットが大きいとされているからです。

徴税機能の向上や、生活保護の不正受給の減少などは、日本の社会課題解決につながると期待されている部分です。

マイナンバー制度は、アメリカの社会保障番号とよく比較されますが、実は諸外国の制度とくらべて優劣を比較することはできません。

それは、マイナンバーが日本独自の戸籍という考え方に基いていることと、税金の納め方や、社会保障の制度設計がそれぞれの国で異なるためです。

諸外国の制度を先行事例として研究された上で、実施されているのが日本のマイナンバー制度だといえます。

便利になったという体験を作れるかどうかが鍵

どのようにすれば認知と普及が進むのかと言えば、最も有効なのは、便利になったという体験を作れるかどうかです。

申請手続きや管理手続きはもとより、マイナンバーを利用したサービス提供においても、まだまだ様々な可能性が議論されるべきところだといえます。

大きなところでは、情報連携の拡充による、税収の向上や、公共サービスの公平化など、より良い社会生活のための基盤づくりに、細かい部分では、本来の目的である事務手続きの簡素化をいかに実現するかという部分に対して、一層の工夫が求められるでしょう。

しかしながら、現時点でマイナンバー制度の廃止を訴えたり、リスクをばかりをことさら主張するのは、せっかくの取り組みを無駄にする結果になりかねません。デンマークで現金がなくなろうとしていることに代表的ように、時代は、キャッシュレス社会になりつつあります。合わせて、個人をどのように特定し、様々な社会保障等を正しい情報にもとづいて行えるかどうかが重要になっています。

社会が複雑化し、様々な仕事も生まれる中で、従来の紙の管理のみですべてを一元的に把握することは無理があることは明らかです。現段階で、せっかく一歩を踏み出しているにも関わらず撤回となると再び同様の取り組みをおこなうのに、更に年月を要してしまうでしょう。

テクノロジーを活用し、実証を繰り返し、改善を続けながら、制度としての確率をはかれることが望ましいのではないでしょうか。

まずは、ひとりでも多くが、マイナンバー制度のおかげで恩恵を受けられたというポジティブな体験をする機会を増やすことが重要だといえます。

参考文献:
マイナンバー制度における情報連携について(総務省)
諸外国における国民ID制度の現状等に関する調査研究報告書(国際大学グローバルコミュニケーションセンター)
特定個人情報の適正な取り扱いに関するガイドライン
マイナンバーカード取得促進のための先進事例集(総務省)
地域経済応援ポイント(都城市)

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