アートで地域活性化する理想と現実 | 岡山県

MACHI LOG編集部


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– 岡山市の南東の沖合、瀬戸内海に浮かぶ周囲約3.6kmの小さな島。犬島というその島は、明治から大正にかけて銅精錬所が操業し、多い時には4000人が生活した活気溢れる島でした。

しかし、銅精錬所の閉鎖と共に人口は減り、現在では平均年齢75歳、約50人だけが住む島となっています。そんな超過疎の島で2004年から毎年「犬島時間」という素晴しいアートプロジェクトが開催されています。

近年各所で、アートを介した地方の再生プロジェクトや、空き家・空き店舗を利用した過疎地域でのアートフェスティバルが行われていますが、そのムーブメントとは一線を画し、今年で10回目という息の長い活動を行ってる「犬島時間」の主宰者である写真家の青地大輔氏に、その「犬島時間」への想いを伺ってきました。

犬島との出会いは、偶然、写真に写り込んだ不思議な煙突

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今から14年程前の事になりますが、当時鳥の写真をよく撮っていて、ある時海辺で鳶の写真を撮っていました。

そして、その中の写真に不思議な煙突が写り込んでいるのに気付きました。

後にそれは銅精錬所跡の煙突である事を知るのですが、とにかく当時その煙突に興味を惹かれたのが犬島を知るきっかけとなりました。知人にその犬島の話を少し聞いて、すぐに島に渡りました。その姿に魅せられ、銅精錬所跡の廃墟を撮影しに半年程島に通っていました。

そしてふと、この製錬所が動いていた当時の事を知っている人がひょっとしたら居るんじゃないかと気になって、島の家々を一件ずつ回り始めました。
若い人なんて一人もいない島ですし、外からも釣り人がたまに来るぐらいですし、始めは本当に不審者扱いでした。

それでも、島に通ううちに100年前に精錬所が動いていた頃の事を知る事が出来、そして100年の間に島が激変した事を知りました。
そんな話を聞くうちに島の人達と多く触れ合い、始めに興味を持った精錬所以上に、その島自体に興味を持つ様になりました。

島に長く通う様になって、その島の事がどんどん好きになっていき、その場所で作品を制作したい、そして多くの人に犬島の素晴しさを伝えたいと思う様になりました。

アートに興味が無い人が島に来る理由

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そんな島に通い出した頃、一つ別に考えている事がありました。自分自身、写真家としても活動していますが、アーティストって自分本位な人が多い様に思います。

その作品がどんな風に見られようが気にしない。自分の想いが達成されればそれでいい、という様な。でも、アーティストとして食べて行こうと思うと、自分の作品を好きになってくれる様な人を増やしていかなくてはならない。

それをどうすれば良いだろうと考えていた時期と、犬島に通い出した時期が重なって、犬島の素晴しさを伝える中でアートにも触れてもらえる様な事を出来ないだろうかと考える様になりました。

犬島の事を素晴しい島だよ、良い場所だよと広めて行くと、もちろんアートになんか興味の無い人でも島に来る可能性がある訳です。

そして、アートを入口に島に足を運んでくれる人が、犬島を知って犬島を好きになってくれる可能性がある訳です。犬島時間を始めたきっかけはそんな感じで、過疎の島を再生させたい、地域再生をさせたいという大きなモノではなくて、もっと個人的な、この島が好きだ、この島の素晴しさを知って欲しい、というすごく小さな個人的な想いが出発点になっています。

犬島みたいな小さな島だと、会う人すれ違う人と、挨拶を交わしたり会釈をしたり、それは当たり前の事です。でも、そういう事を普段の都市生活の中ではなかなか出来ません。

よく考えれば自分が子供の頃は当たり前だったコミュニケーションが無くなっているのです。例えば、犬島での体験を通して、そういう普段の生活を考え直すきっかけになったり、ひいては社会を変えていく様な事が出来るかもしれない。言わばコミュニティではなく、コミュニケーションの再構築をしたかったのかもしれません。

増えた協力者と失われていく景観

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10年間続けて来れたのは、嘘をつかないとか、過大評価をしないとか、そういう事を心がけていたのかもしれません。

例えば入場者数にしても何万人が来ましたとか、アートで街起こしといった様な、パフォーマンスだけのものにはしたくなかったのです。

別に、どれだけ大きい事をやっているんだというアピールをするのが大事な訳ではなくて、自分達が、参加するアーティスト達が、そして島の人達が楽しむ事が大事なんです。

そして、犬島時間に足を運んでくれた人達に、島の良さを伝えるという事です。そうして、犬島時間で島に来てくれた人が、今度はイベントではない、ごく日常の時間を島に来て過ごしてもらえれば、成功だなと思っています。

また、10年の中で変化して来た事もあります。

3回目迄は特に入場料等も取っていませんでした。自己資金も大分つぎ込んでしまい、そろそろやめなければならないかとも思っていたのですが、多くの仲間から後押しと助言を頂き、4回目からは500円の入場料を頂いています。

また、去年からは開催時期を夏休みではなく、ゴールデンウィークにかえました。そうする事で、学生さん達以外に社会人のお客さんやボランティアのスタッフさん達も一気に増えました。

そして、瀬戸内国際芸術祭も開かれ犬島にもアートスペースが出来、にわかに盛り上がりをみせています。ただ、僕が島に通い出した頃には、70~80人近くいた住民も10年以上が経ち、今では50人程にまで減ってきています。そして、失われて行く景観というものが確実にあります。

住民が0になるまで、犬島時間は続きます。

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ここ10年ぐらいは1年の内2~3ヶ月は犬島で過ごしています。

これまで、何度も島に住むというシュミレーションを立ててみました。しかし現実的ではありません。学校も、病院も、行政施設も産業も島には何もありません。

海というのが大きな壁になっていて、今の仕事を続けようと思うと打ち合わせに出かけるのも自由には出来ません。まずは船舶免許を取る事から、となかなか現実的に厳しいものがあります。

これまでの様に通い続けるというのが、一番良いと思っています。出来れば、この島に住民が一人も居なくなってしまうまで、犬島時間を変わらずに続けていきたいと思っています。

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そう言えば、明日、犬島に住んでいる方の息子さんが結婚されるというので、写真撮影を頼まれています。島の人から頼まれる仕事、犬島時間から広がっていった仕事というのも、だんだんと増えて来ました。その辺りも含めて、島や島の人達との距離感は大切だなと思います。

島の住民では無いのですが、島の事が本当に好きだという。そういう事で生まれるコミュニケーションが、結果、島の人達にも活力を与えている様な気がします。

プロフィール
青地大輔 : 1973年 岡山県生まれ。
カメラマン、グラフィックデザイナーという仕事の世界から“表現”の世界に足を踏み入れる。
2003年の奈義町現代美術館での企画展を皮切りに、数多くの展覧会が開催された。また、2004年より犬島にて空き家を利用したアートプロジェクトを企画。犬島時間代表。2005年 ブルーワークス PHOTO & DESIGN Office 設立。写真を中心にデザインや企画の仕事を手がけている。

犬島時間の紹介はこちら

▼ 第10回犬島時間
2013年4月27日(土)~5月5日(日)
11:00~16:30
500円(12歳以下は保護者同伴で無料)
犬島内各所にて

<出品作家>
・青地大輔・井内清志&アトリエSORA・井本真紀・小野耕石・片山康之・小林泰子・高嶋幸市・高本敦基・千葉尚実・福井一尊・細見博子・宮崎郁子・村上トモミ・役重佳廣・吉川誠司

犬島ガラス
・白神典大・中野由紀子・平井睦美

パフォーマンス
・赤田晃一・三尾奈緒子・リベルバーバ

▼ 現在犬島時間では、ボランティアスタッフも募集中
http://blue-works.jp/inujima/

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