ライネフェルデ市の都市再生。第四回はマスタープラン作成にあたり、何を重視すべきか、そのポイントについて探ります。
4、再生期
1995年に、ライネフェルデ市は最初のマスタープランを作成し、南部の集合団地区域の再生について、
①インフラ網の維持改善
②経済発展に伴う雇用環境の創出
③住空間の高質化を目的とした改築及び周辺環境の改善、住宅市場の安定を目的とした不要な集合住宅の取り壊し及び減築の実施、高質な住居の供給
④周辺地域と調和した都市構造および景観の実現
の4項目を基本方針に定め、実施することを決定した。この都市再生事業は、定期的なモニタリング調査によって、社会情勢・地域動向・住民の合意形成に即した計画へと修正することように定められている。
このマスタープランにより実行に移された主な試みとしては、団地中心部の重点的な整備、緑地帯の整備、戸建団地の開発、住居に対する私的空間の導入、不要な集合住宅の取り壊し・減築等が挙げられる。
とりわけ、住空間の高質化を図るため、画一的で殺風景な、無味乾燥であった集合住宅の機能とデザインを一新するための改築が実行に移されたことは、特筆に値する。
不要な住棟を取り壊し、或いは減築する一方で、残した住棟を街区ごとに暖色・寒色に統一して塗りかえたり、住居ごとにバルコニーや坪庭を設置することで、資本主義経済の導入によって市民に生じた価値観、例えば、プライバシーの保護や「住みやすさ」「快適さ」の実現がはかられたことは、画期的であった。
なお、取り壊しや減築によって生じた廃コンクリートは、道路舗装や戸建住宅の建材へと転用されている。
対象となった集合住宅は、市営のもの、市の住宅公社が所有するもの、旧東ドイツ時代に設立された管理組合が運営するもの、これら3種に区分される。居住者の中にも、このリノベーション・プランに反対するものもあったが、周囲の住民の同意数が増加していくにつれて、その数は少なくなったという。
2000年、ライネフェルデは、ハノーヴァー万博における「未来工業都市プロジェクト」名乗りを上げた。この際、ライネフェルデの集合住宅再生にかかる国際コンペが開催され、各地から、都市再生にかかる多くの企画が出展された。
この結果、意匠設計とコスト・パフォーマンスの面で、以前の取組みの成果以上のものが期待されることがわかった。これを契機に、ライネフェルデは都市再生計画の実施にあたり、専門家によるコンペティションを継続的に導入した。
その結果、旧来の老朽化した住宅が、デザイン性と機能性に優れた高質な住空間へと次々に生まれ変わって行った。現在、ライネフェルデの各地で見られる独創的な建築物のほとんどは、このコンペティションを通して実現されたものである。
また、高質な住空間の実現は、住宅部分のリノベーションのみでは実現されないとの立場から、ライネフェルデは公共空間の拡充・充実にも着手した。
駐車場の整備や、日本式庭園、若年層向けの公園施設、集会施設、緑地帯の整備が実施されている。これらの施策の基本には、常に、住宅市場の変化に適合した、資産価値の高い住宅供給を目指すことが至上目標に据えられている。
なお、これらの事業の財源は、ドイツ連邦政府や州政府が実施した旧東ドイツにおける都市再生事業による補助金の投入によって賄われており、ライネフェルデの自己負担は、計画の初期段階を除いて、殆ど生じていない。1993年以降、現在までに投入された補助金は、実に1億7,700万ドルにのぼっている。