昨日9月1日は防災の日。会社で避難訓練をした方も多かったのではないかと思います。思いだすのはやはり3.11。あの日デスクの下に潜り込みながら感じた恐れは、今も私の心に残っています。
3000名以上が亡くなった宮城県石巻市
迫り来る津波を高台から撮影した映像。皆様も一度はご覧になったことがあると思います。宮城県石巻市では、住宅地が津波に飲み込まれ、3000名以上の方がお亡くなりになりました。
今は一面の野原のように見える沿岸部。震災前は多くの人が日常生活を送る住宅地でした。
人の息づく場所が一瞬にして津波に飲み込まれたという事実は、点々と建つ家々や、一本だけ残る木を見ることでようやく真実味を帯びます。当時の惨状が想像もできないほど、今は穏やかな景色が広がっていました。
「がんばろう石巻」という立看板と慰霊碑
実はこの一見のどかな風景の広がる沿岸部は非可住地域となっています。防潮堤と盛土をした高い道路で挟まれた区域になることが決まっています。
石巻の沿岸部を見渡すと、「がんばろう石巻」という立看板と慰霊碑「2~3軒の家々と、一本の枯れ木の姿が見えます。あとは見渡す限りの野原です。この広大な土地は「震災復興祈念公園」という形で、犠牲者への追悼と鎮魂の場として、また、被災の実情と教訓を後世に伝える場として、整備される予定になっています。
危機感を感じて活動「石巻ありがとうハウス」の尾形勝嘉さん
この沿岸部がどのように変わっていくのか、忘れ去られてしまわないか、そんな危機感を感じて活動されているのが「石巻ありがとうハウス」の尾形勝嘉さんです。
尾形さんは「実際の被災の爪痕をなくしてはならない」という想いから、ほぼ全壊した自宅跡で「石巻ありがとうハウス」を設営、被災地を訪れた人たちと、被災された人たちがつながる交流の場として、震災の風化を防ぐ活動を行っていらっしゃいます。
「民間が進める震災遺構」として、震災の記憶を伝えていきたい。そんな思いからスタートした「ありがとうハウス」。「B-1グランプリ」で6位入賞した「石巻やきそば」の看板を掲げ、日々、現場を訪れた方に被災の現状を話してくださっています。
風化させられない体験
尾形さんご自身も、東日本大震災の津波に飲み込まれたそうです。当初3mと伝えられた津波情報。被害の出る最沿岸地域の人々は避難しましたが、尾形さん始め近隣の方は「ここまでは来ない」と判断され、地震の後片付けをされていました。そんな中、突如家の壁に大きな衝撃。まさかの津波襲来です。
日和山公園側に逃げた尾形さん。2時間泳ぎ続けて、肋骨などを折る大けがをしながらなんとか助かりました。津波の濁流に飲み込まれていく近隣の方々、「あの光景は本当に…」と、言葉を切られた尾形さんの心の中には、忘れたくても忘れられない、つらすぎる光景が刻まれているに違いありません。
逆方向に向かいはぐれた奥さま、家の片づけをしていた妹さん、一縷の望みを持ちつつも向かった遺体安置所。そこでは、性別とだいたいの年齢別に並べられ、ビニールにくるまれたたくさんのご遺体が並んでいたそうです。着衣から自分の親族を探し出すしかない現状。残された人々にとっても、あまりにつらい時間だったと思います。
そのときの恐ろしさ、悲しさ、つらさを語ることは、その追体験でもあります。話すこと自体も大きな苦痛を伴うこと。それでも、「この”がんばろう石巻”という看板を見て、周りの景色を見て、それだけで帰ってもらっては意味がない」と、ご自身の体験を話し続けてくださっている尾形さん。そのお姿に、尾形さんの決意を感じました。
石巻の仮設住宅の「いま」
今、石巻で生活されている方々は、このようなつらい経験を経て、それでもなんとか前を向いて生きていかねばならないと、日々闘っていらっしゃる状況です。まだまだたくさんの仮設住宅が残り、多くの方々がそこで生活をしていらっしゃいます。
本当に簡易なプレハブで、隣家とは薄い壁一枚。隣の棟とも2メートルの距離があるかないかという状態です。そんな中でも、野菜を育てたり、花を育てたり、少しでも生活に潤いを保ちたいという人々の願いを感じました。
東日本大震災について語られることも少なくなり、被災地を訪れる人は日々減少の一途を辿っているそうです。「ボランティア」とか「被災地に行く」とか、そんなに構えなくてもいいから、遊びに来て、少しでも何かを感じて、少し震災のことや被害のことを思い出してほしい。現地のかたから感じた願いです。
あまりにまじめに書き過ぎましたが、実は石巻、本当に素敵なところです。青々とした緑もきれいで、虫の声が聞こえて、とてものどかな自然を満喫できます。
そして何より素敵なのはやはり海の幸!「復興マルシェ」では、こんな至福の海鮮丼が食べられます!
是非皆さんも石巻に遊びに行ってみてください。ありがとうハウスで焼きそばを食べ、復興マルシェで海鮮丼を食べ、日和山公園から景色を楽しみつつ、震災についても思いを馳せて、現地の方からお話を聞く。そんなふうに被災地を訪れて、防災について改めて考えてみるのもいいかもしれません。